屋久杉について
神秘的な屋久杉
樹齢数千年とも言われる屋久杉の生態はとても神秘的です。通常、樹齢1000年以上経っているものを屋久杉といいます。中でも巨木は名前で呼ばれていて、「縄文杉」や「紀元杉」などは屋久島を代表する樹木になっています。
(樹齢1000年以下のものは「小杉」と呼ばれている。)
標高1000mくらいのところには杉の森と呼ばれ群をなして生息しています。この屋久杉は日本各地に見られる杉とまったく同じ種類のものです。(1200m前後のところに
巨木が多く見られます。)
しかし、一般的な杉の寿命が800年程度なのになぜ屋久杉の寿命が数千年にも及ぶのでしょうか?さまざまな要因が考えられますが、切り株などを見てみると屋久杉の年輪は非常に目が細かくあり、成長の遅さが良くわかります。
もともと屋久島は花崗岩が隆起してできた島なので基本的には植物が育つ環境としてはあまり適していません。その証拠に現在でも年間1cm程の隆起が確認されているくらいです。
では、何故屋久杉は何千年も生きるのでしょうか?
それは屋久島に降り注がれる豊かな水に関係があるようです。
屋久島を取り囲む黒潮。赤道直下で温められ平均気温は20度にも達っします。
屋久島の森を育む水蒸気暖められた潮は水蒸気となって屋久島の斜面を駆け上がり、大量の雨を降り注ぎます。
年間降水量は山頂で10000万ミリ、平地でも4000ミリに及び、屋久島では月に35日雨が降ると言われる所以です。
島のいたるところには無数の苔(コケ)が生育しており、その数600種とも言われ日本一を誇ります。
屋久杉を育てるウツクシハネゴケ屋久杉を育てるシラガゴケ
ウツクシハネゴケ シラガゴケ
屋久杉を育てるヒノキゴケ屋久杉を育てるヒムロゴケ
ヒノキゴケ ヒムロゴケ
その苔が大量に降り注ぐ雨を含み屋久杉の土壌を形成しています。花崗岩に取り巻いた苔があらゆる植物の生命の源となっているわけです。
また、杉に取り巻いた苔は雨風を防ぐばかりでなく雑菌からも杉を守ってくれています。
花崗岩は栄養分が少なく、杉の成長が他の地域に比べ遅くなります。すると、年輪の幅が緻密になり材は硬くなります。そうなることで樹脂道に普通の杉の約6倍ともいわれる樹脂がたまります。この樹脂には防腐・抗菌・防虫効果があるため、屋久杉は長い年月の間不朽せずに生き続けられるのです。
また、硬質・防腐・抗菌・防虫などの特性をもつ屋久杉は古くから珍重され、屋久杉の平木がそのまま通貨になった時代もありました。
かつて東アジアでは文化を育む役を果たした照葉樹林も、他の地域では絶滅したにも関わらず、島には見事なまでに垂直分布として残っていることからも樹齢に何らかの関係があるのでしょう。
こういった環境を生き延びた屋久杉は、縄文杉など樹齢7000年を超える巨木を代表に、時を隔て今もなお生き続けているわけです。
屋久杉と林業の関わり
小杉谷村は近代林業の伐採基地として大正12年に開村しました。周辺の伐採計画が終了する昭和45年までに林業関係者で賑わいました。
昭和30年代には500名を超える人々が暮らし、小中学校には150名もの生徒が学んでいました。小杉谷村は伐採計画の終了と共に50年という短い歴史の幕を閉じました。
倒れた屋久杉の上に芽生える新たな屋久杉天災地変により倒れた屋久杉
倒木上更新
樹齢1000年以下の小杉、いわゆる屋久杉の子供達の生態系を考えてみる。
屋久島では雨が多く、木肌や岩に生えた苔から樹木が芽生えることが少なくありません。良く観察していると面白い光景と出会うことができます。
杉は明るい所でした育たないため、びっしりとつまった小杉の林などでは新しく育つ場所がありません。
ところが何かの風雨などの影響で巨木が倒れると、ぽっかり陽のあたる場所ができます。その明るい倒木の上に杉の種が落ちると芽が出て育っていきます。これを倒木上更新と呼んでいます。倒れた木の上に新たに芽が出て育っていくわけです。
倒木や切り株の上には小さな若い芽のたくましい生命力を感じることができます。
倒木上更新は深い森の中で展開される絶妙な世代交代の仕組です。