屋久島 垂直分布
屋久島 垂直分布
垂直分布とはいったい?
屋久島の魅力の一つであり、世界遺産登録に大きく影響を与えた要素でもある垂直分布。2000m近い山頂は、ほぼ北海道並の気候でありながら、平地に至ると亜熱帯地方に見られる植物などで彩られる。そう、屋久島は簡単に言うと日本全土の気候を一つの島で併せもっているといっても過言ではない。
日本の地形は縦長にあり、季節の移ろいを老若問わず肌で感じている。狭い島国で豊富な文化が育まれた所以でもある。
屋久島は一つの小さな島でありながらこういった多種多様の気候をもっており、そこに生息する植物は屋久島固有のものも多く、まさに自然の博物館と比喩したい。
世界遺産に登録された地域はなんと島の面積の2割にも及ぶ。そのほとんどは国有地となっているが、一部西部林道周辺に民有地を含み、海岸線までも世界遺産の登録に指定されているのは屋久島だけだ。
島の西方にある西部林道から国割岳(標高1,323m)を望む。海まで続く山の斜面にあでやかな緑に輝く世界遺産(垂直分布)を見ることができる。
屋久島は、日本の森林帯の中では暖帯広葉樹林帯の最南端にあたり、標高2,000mに近い山岳島という自然条件のため、垂直分布は亜熱帯から亜高山帯まで幅広く、非常に多くの植物相が見られます。
屋久島では日本の森林帯で一般的に見られるブナ、トウヒ、シラベなどは見られません。また、南限植物であるスギ、モミ、ツガ、ヒメシャラなどや、北限植物、固有植物などは多く生育しています。
天然のスギは標高600〜1,800m付近まで生育しますが樹齢1000年を超える屋久杉や巨木は標高1000m〜1300m地帯に集中しています。
垂直分布
山頂付近(山頂草原帯)では屋久杉の樹高も低くなり、森林の限界になります。こういった地帯では枯存木とよばれる屋久島特有の木が生育しています。亜高山帯の標高ですが、あたりは高山帯の景色で覆われ森林と呼ばれる僻地を垣間見ることができます。このあたりにはヤクシマシャクナゲなどが岩にしがみつく様にたくましく生息しており、美しく彩られます。
900m〜1600m付近 (屋久杉林)
このあたりまで降りてくると屋久杉が良く目につきます。ヤクシカなども生息しており、食べ物が豊富なことが伺えます。上部にはブナなど多様な広葉樹と屋久杉のハーモニーです。モミ、ツガを交えた針葉樹やハイノキやツバキなどの常緑の広葉樹も生育しています。1000m近くから徐々にブナ帯的な森林への移行がみられるのもこのあたりの特徴です。
500m付近からスギやツガなど針葉樹が見られ、海岸線から標高600mまでは、シイ、カシ、イスなどの照葉樹が見事です。
亜熱帯林
海岸近くには照葉樹とともに亜熱帯植物も繁茂していて、平地ではメヒルギ、ガジュマル、イチジクなど熱帯の植物が多く見られます。栗生川の河口にはメヒルギのマングローブが残されています。
メモ:照葉樹林
ヒマラヤ山麓から日本の中央部まで、東アジアの亜熱帯から暖温帯にひろがっていて、シイやカシ、ヤブツバキなどつやのある厚い葉をもつ常緑広葉樹の森。
現在では多くは残っておらず、関東地方より南の、低地の農地や都市の多くは照葉樹林を拓いてつくられた。
世界自然遺産として登録された「屋久島の森林」
1992年(平成4)年9月に我が国は126番目の世界遺産条約の締結国となり、1993年(平成5年)12月11日に「屋久島」と「白神山地」が、日本で初めて世界自然遺産として登録されました。 屋久島の世界遺産地域は、林野庁が設定している「森林生態系保護地域」の「保存地区」が主体となっています。
世界自然遺産(屋久島地域)
世界遺産条約は、顕著な普遍的価値を有する文化遺産及び自然遺産の保護を、国際的な協力、援助のもとに図っていくことを目的として、1972年(昭和47年)の第17回ユネスコ総会において採択された条約です。 屋久島の森林は、亜熱帯から亜高山帯に及ぶ植生の垂直分布が顕著に見られ、樹齢数千年のヤクスギを有するほか、多くの固有植物、北限・南限植物が自生していること等特異な生態系を構成していること、さらに、アカヒゲ、アカコッコ等絶滅のおそれのある野生動物が生息していることが登録の理由となっています。
屋久島森林生態系保護地域
森林生態系保護地域は、原生的な天然林を保存することにより、森林生態系からなる自然環境の維持、動植物の保護、遺伝資源の保存、森林施業・管理技術の発展、学術研究等に資することを目的に設定しています。森林生態系保護地域の地帯区分は、保存地区(コア)と保全利用地区(バッファ)の2つに区分され、
@保存地区は、森林生態系の厳正なる維持を図る区域、
A保全利用地区は、保存地区の森林に外部の環境変化の影響が直接及ばないよう緩衝の役割を果たす区域
となっています。