ニャック・ポアン
ニャック・ポアン
治水の信仰対象となっていたニャック・ポアンには「からみあう蛇(ナーガ)」の意味がある。2匹の大蛇によって基壇を取り巻かれた祠堂が池の中央に浮かんでいる。この寺院は、東西のバライ上に浮かぶ両メボン寺院と同じ性質をもっていて、四方に張られた小池に水を流れ出す、いわば水門のような役目を果たしている。
この技術はクメールの農耕文化を象徴していて、当時の高い治水技術が伺える。中央の大池から四方にある小池に、象、人、ライオン、馬の頭部をかたどった樋口から水を流しこまれる。さらに中央池にはインド神話を題材としたヴァラーハ(神馬)のほぼ等身大の彫刻があり、物語性が強く、いかにも人々の信仰の対象となったことを裏づけている。