屋久島縦走-淀川登山口
いくつものピークを乗り越えて来た私たちも、迫り来る斜面にとうとう根負けした。ここまで気合で持ちこたえてきたがついに気合エンジン終了。もう怒りエンジンでも気合エンジンでも前に進めん。最終バスの時刻には何とか間にあいそうだが、気力も体力も尽き果てた。そんな時、聳えるように立ちはだかる目の前の斜面を見ながら二人はどうしたと思いますか、、、?
「泣きました」ハイ、泣きました。もう泣くしかない、、、。ハーンアーンとすすり泣き、後ろからも息子のすすり泣く声が。ウーウーと。振り返ると泣きながら顔をくしゃくしゃにしながら懸命に歩く息子の姿をみてまたもらい泣きした。わーんわーんと泣きながら二人で歩いて行く。そうこうしていく内に残り1kmを切った。
泣きのエンジンが全開だ。無我夢中で泣きながら歩いた。歩いて歩いていくうちに一人の老練な登山者とすれ違った。おそらく遠くから二人の泣き声を聞いていらっしゃたのだろう。息子に登山口はもうすぐですよ!と声をかけていただいた。思わず目を合わせた親子は、この言葉にどんなに励まされたことだろうか。心から嬉しかった。そして、なによりもこの二日間の屋久島縦走が完結する瞬間がまじかに迫っている期待、そして達成感が待ち遠しかった。
気力、体力、感情、全て出し切ったせいだろうかやけに身体が軽い。そして気持ちがいい。二人のペースも自然と速くなっていった。そして最後のピークを登りきり、ゆるやかな降りの先にアスファルトの道路が見えてきた。それは、普段よく見る普通の車道ではなく、とても神々しいものであり、ゴールを告げる場面でもあった。思わずやったーと叫びあい、二人で抱き合って喜んだ。ヤッター着いた。がんばったー!、がんばったー!。抱き合いながら、また自然と涙が溢れてきた。やりきったという達成感と幸福感で心は一杯になった。