バリ島の工芸品
バリ島の工芸品
バリ島の工芸品は、かつてはシルクで織られることが多く、伝統的に司祭や王族が儀式で身にまとっていたが、19世紀後半から木綿製のものが作られるようになり、庶民にも普及した。
イカットとはインドネシア独特の手織りの布のことで、紡いだ糸を膜様に合わせて先に染めてから織るという手の込んだ細かな作業で制作される。ちなみにイカットとはインドネシア語で「結ぶ・括る」という意味で、糸を染める際に一部分を結んで防染することからその名が付けられた。
イカットで作られた衣装を着ている人はクタなどの大きな町ではあまり見かけなくなってしまったけれど、地方では今でも日常着としてよく着られている。島内ではギャニャールが主産地で、ほかにカランガスム県、スマラブラ、シンガラジャなどで作られている。
ソンケット
シルク生地に金糸や銀糸を織り込んだ布がソンケットで、 結婚式や成人式などの特別に格式高い行事や、儀礼のときに石川する民族玖裴に用いられる。模様は草や花など植物をモチーフとしたもののほか、「ラーマーヤナなどの物語を題材にしたものもある。
グリンシン
グリンシンとはダブルイカットのこと。イ力ットは通常、経か緯のどちらかを染めるが、このグリンシンは両方の糸を染めて作るのが特徴。 バリ島ではトウンガナンにしかにわらない織り布で、織らないという掟があるため、できあがるまでに10年以上時間がかかるものもあるといわれる。糸を縛って染め上げ、両糸をどのように合わせるかで色や柄が決まるというかなり手の込んだ織物だ。村では魔除けや無病息災を願って結婚式や成人式など、特別の日に着用されている。染料は植物の樹皮や根、葉などからとった天然染料で、渋い色は、独特の存在感を放ちます。模様も精巧なものが多くそれに見合った価値感があり高額となっている。
バティック
「ジャワ更紗」という名前で呼ばれるようにジャワ島が本場のバティック。バリ島で目常着として愛用されている染め物で、市場などで女性たちが身につけている腰布の多くもバティックだ。バリ島内ではトパティが知られ、大規模なショップも多い。
供物を入れる龍
バリ島の人々の暮らしに欠かせない、毎日作る供物。バリ島の人々にとって、植物を育むという行為はごく日常的に行われている。家の中だけでも何十ヵ所も捧げられる供物の入れ物の多くが、ロンタールヤシの葉で編まれている。また、オダランなどの儀式で寺院に持って行く供物の入れ物もロンタールヤシなどの植物で編まれ、飾りにも葉を使った見事な細工がほどこされている。
竹細工
竹を使った製品はバリ島のあちらこちらで見かけるが、観光客が最もよく目にし、また、その魅力に取りつかれるきっかけは、高級リゾートホテルのロビーや客室内にさりげなく配置された家具類を見てだろう。太い竹を籐などと組み合わせたソファやテーブルをはじめ、繊細な装飾が施されたランプシェードなどの室内装飾品も数多く作られている。こうした家具のほとんどを作っているのが籐細工でも知られるのがボナ。
竹製家具の歴史は意外と浅く、西欧人デザイナーとの交流により生まれたものが多いといわれる。黒っぽい竹はジャワ島産のものが多い。店の裏は作業場になっていて、周囲にある竹林で、材料に使われている白っぽい竹がとれる。多くの店舗が街道沿いに軒を連ね、どの店でも繊細な作業風景を見学することができる。
竹鈴
竹鈴はもともとはたんぽに立てられるスズメ追いの物だったが、それを改良して軽快なリズムが出るように工夫した楽器も売られている。家の出入口や窓に吊りドげられる小さなものはみやげにも最適。スカワティの村に工房が並んでいて、からくりが動くように細工されたものなども売られている。
石彫り
バリ島では、下官や寺院などの門や壁の装飾、家の前に置かれた神々の像など、さまざまな場面で石彫りに触れる。これはバリ・ヒンドゥー教の伝統的な宗教信念に基づく様式で、邪悪なものを駆遂、一掃し、寺院の中に入れないようにするためのものとされている。特に寺院の入口の門の上に掲げられた、大きく見聞かれた目や大きく聞いた口を持った異形の石彫りは存在感がある。
石彫りはこうした寺院を飾るものとして発展し、モチーフもヒンドウーの神々の像や『ラーマーヤナJの登場人物などが多いです。1930年代から始まった欧米との文化接触で多くの芸術や工芸が影響を受けたが、この石彫りだけが外部環境の影響をあまり受けず、現在まで伝統的な手法、モチーフが今も受け継がれている。
石彫りに使われる素材は、バリ島に多く産する火山性の砂岩で、軽く軟らかいので彫刻しやすいが、そのぶん崩れやすいという一面もある。石彫りの村として知られているのはバトウブランBatubuan。街道沿いに店が並び、出来上がった作品が無造作に雨ざらしで置かれている。最近ではオリジナリティ溢れる作品も作られるようになってきた。
木彫り
バリ島の木彫りのルーツはヒンドウー教の高僧ニラルタがが15世紀にジャワ島から渡ってきて伝えられ、村人に彫刻の才を授けたことに始まったと伝えられている。その後、木彫りは寺院の建物や装飾のデザインとしてだけでなく、魔除けや守護神をかたどったもの、トペンなど祭礼用の仮面など数々の作品となってバリ島に普及していった。
題材の多くは、ヒンドゥー教の神々の木像や『ラーマーヤナ』、『マハーバーラタ』などの物語からとったものだったが、1930年代からは外国人観光客に売ることを目的とした宗教色のない木彫が現れ始めた。また、色を塗らずに木目を生かした作品が主流になったのは近年。
バリ島みやげの定番となっている鳥や花、果物などの明るい色彩のウッド・カーピンクは、トゥガラランやスバトゥで盛んに作られている。最近はみやげに人気のバリ描など、ポップな置物を得意とする店も出てきた。木彫りの素材となるのはチークや黒檀、白檀、ヤシの木など。神像のほか、踊り子や農夫、動物などをモチーフにしたものも作られている。
バリ島のお面
バリ島のお面は様々な表情があっておもしろい。 王や女王の顔はもちろん、怪物の顔や外国人の顔まで多種多様だ。 これらのお面のほとんどはマスの村で作られているが、寺院に納めるためのお面は、 数ヶ月も寺院に泊り込んで作られることもあるという。その際使われる木は、 村にある神聖なる魂の宿ったものが選ばれ、僧侶が儀礼を行ったのち一部が切り取られる。
顔料は天然染料だけが使用され、何度も塗り重ねられ渋い色合いをかもし出す。 完成後は入魂の儀式が行われて寺院に納められる。 最近ではみやげ用のお面も数多く見かけるようになった。
楽器
ジャワ語で「打つもの」という意味をもつガムラン。 解りやすく言えば打楽器を中心としたオーケストラで、楽器の種類はさまざまだ。 代表的なものにはガンサ(青銅製鍵盤打楽器)、ジェゴク(竹製打楽器)、ゴン(銅鋸)、 クンダン(太鼓)、スリン(竹笛)などがある。
ガムラン音楽はまさにバリ島の人々の魂の音色で、祭礼や伝統芸能が生活にしみ込んでいる。 数々の寺院の祭礼や伝統舞踊、ワヤン・クリツなどと密接に関係しながら発展したと断定できる。
どの楽器の音色も激しさと優しさのなかに物悲しさが語られ、ときには情熱を秘めた音色だ。これらの楽器は音から村に一つはあるガムラン楽団用に主に製作されてきたものだが、バリ島北部のサワン村などにも工房などでは、 観光客向けのみやげとしても作られている。
銀細工
バリ島の銀細工はバリ舞踊の踊り手が身につけている豪華な装飾品から、 欧米人デザイナーにより洗練されたアクセサリーまで種類は豊富だ。 バリ島の銀細工は王族の人々や伝統芸能の踊り手を飾るものとして発展してきた。
バーナーで銀を溶かし、細かな装飾をピンセットでつけていく作業など、 ほとんどの工房で見学することができる。現在、純度95%以上の高品質の 銀を使用した繊細で個性的なアクセサリーの多くは、チュルツで作られている。
こういった銀細工を製作している店は殆どが家族経営で、 最近ではお土産として求めやすい食器やインテリア小物の種類も増えている。
陶器
バリ島で陶器といえば素焼きが一般的。良質な赤土から作られた製品は、食器はや置物、壷、雑貨小物など種類も豊富で、手作りの素朴な風合いを醸す。人の顔やカエル、魚などをあしらったユニークなものも多く、バリ人のユーモアがうかがえる。赤土色の素焼きがほとんどだが、最近では自然体でプレーンな彩色を施したものも増えつつある。
カエルの陶器
バリ島の観光地のいたるところで目にするカエルの置物。近年ではカエルがデザインされたコーヒーカップや灰皿など本来の意図とは関係ないものも多いが、バリ島みやげの定番として根強い人気がある。これは、カエルが雨を呼ぶ生き物として雨乞いの象徴であることから、神様からの恵み(雨)に対するお礼として置かれたものだ。タバナン県プジャテン村には本来の意味を持った陶器のカエルの置物を多数手がけている工房がある。
工芸街道ショッピング
安く買おうと思ったら、先に値段を下調べしておき、ベモなどを使って自分で店を訪ねて交渉する とよいだろう。通常のショップの商品はガイドやタクシードライバーへのマージンを含んでいるケース が多く、安く買えたと思っても、結局は免税店で買ったほうが安かったということもあり、 値段交渉は慎重に行いたい。
しかし、工芸街道にはここでしか買えないものなどもあり、豊富な品揃えがなんといっても魅力だ。 かなりの高額商品を買うのでなければ、見て廻るだけでも楽しく、わざわざ出かける価値もある。