バリ島の地理
バリ島の地理
aバリ島はアルプス・ヒマラヤ造山帯に属する小スンダ列島の西端に位置している。島の西にはバリ海峡を挟んで大スンダ列島に属するジャワ島が、東にはロンボク海峡を挟んでロンボク島を含むヌサ・トゥンガラ諸島があり、帯状の列島のひとつをなしている。バリ海峡の最も狭いところは3km程であり、バリの海岸からはジャワ島の姿形をとらえることができる。
このような地理的関係にあるバリ島は、広くはインド洋を中心にフィリピンから紅海までをつなぐ「ひとつの海」の周縁に位置し、他の東南アジア地域と同様、古来より、この広大な海における交易を介した人と物、言葉と思想の移動、交通の一地点となった。そして、この交易を統制するとともに、人びとの生活の小宇宙を形成する王国が誕生し、バリ島の「歴史」が紡がれ始める。
地形
バリ島の面積は5,633km2。島の北部を東西に火山脈が走り、バリ・ヒンドゥーにおいて信仰の山とされるアグン山(標高3,142m)やキンタマーニ高原で知られるバトゥール山(標高1,717m)など多くの火山を有している。バトゥール山近辺には温泉も湧出している。この火山帯の活動により、バリ島の土壌はきわめて肥沃なものとなってきたと同時に、時に人びとに災害をもたらしてきた。
そして、バリ島の南部では、火山脈に位置するブラタン湖などの湖水からの流れが下流域に向かって分岐している。その分岐と水量は古来より計算通りに案配されてきたものであり、スバックと呼ばれる伝統的な水利組織によって21世紀初頭までその自然環境とともに維持されている。そして、この水系によって島の南側全体が緑にあふれる土地になっている。
これに対して北部では雨こそ少ないが、コプラやコーヒーが栽培され(キンタマーニ・コーヒーなど)、牧畜も行われている。また、島の西部は、ほとんどが深い森林に覆われた最高1,000m前後の丘陵地帯になっており、海岸沿いの漁村を除けば、ほとんど無人である。今日、一大観光地として発展しているバドゥン半島も乾燥地帯である。
したがって、バリの村落の大半は、一部の都市地域を除けば農村であり、土地の農業利用率が極めて高い。農業は水耕農作が中心であり、とりわけ、棚田で知られるバリ島中南部の斜面一帯では、上にみたように年間を通じて安定した水の供給がなされ、二期作から三期作が可能となっている。ただし、21世紀初頭では平野部を中心に急速に宅地化が進んでもいる