太魯閣渓谷(タロコ渓谷)

台北に縁があってたびたび訪れていた私だが、渡台5〜6回目にして やっと念願の太魯閣渓谷に行く事が出来た。
台北の友人に花蓮出身の人がいて、その方が案内してくれることに なったのである。

 

花蓮へは飛行機で30分程度なので、台北からは十分に日帰りできる 距離だ。当日の天候は晴天に恵まれた。私たちはいつもの亜士都ホテル でモーニングを摂り、早朝9時に出発して、松山駐機場へ向かった。
松山駐機場は台北にある空港で、以前は国際線も離発着して いたそうだが、現在は国内線を中心に台北国内の空路の拠点となっている ところだ。

 

松山駐機場着。花蓮へのチケットを購入する。価格はよく覚えていないが、 日本に比べるとかなり割安感があったことを記憶している。
空港といってもそれほど敷居も高くなく、当日というのにチケットも 予約なしで普通に購入できる。後は登場ゲートへ向かって案内板にしたがって 歩いて行くだけだ。これならいつでも個人で手軽に行けるぞと、その時思った。

 

花蓮への乗客は台北国内でも利用者が多く、一日に数便運行され、 飛行機も中型の立派なジェット機だ。真ん中に通路を挟んで両側に 座席が3列並ぶ程度の大きさだった

 

飛行機はいざ花蓮へ。空路30分だとあっという間で、離陸して シートベルトのサインが消え、ソフトドリンクのサービスがあり、 飲み終わったら着陸態勢へ。こんな感じで、瞬く間に花蓮空港 へ着陸する。

 

花蓮へ到着。飛行機で移動したためか、同じ台北なのに、 まったく異国に来たような錯覚を覚える。気候も若干 台北とは違ってカラッとした感じだ。

 

空港には友人のお姉さんが車で迎えに来てくれていた。 ここからタロコ渓谷まではお姉さんの運転で案内してくれ ることになっていたからだ。さっそく私たちは大型の4駆に 乗り込みタロコ渓谷へと向かった。

 

花蓮市内を駆け抜け、山間の広狭としたワインディング ロードへと入って行く。全開にした車窓からはマイナスイオン をふんだんに含んだ清風が心地よく、車内は爽やかな 雰囲気に包まれる。空港から車で走らせる事40分程度。 念願の太魯閣渓谷(タロコ渓谷)に到着した。

 

そそり立つ断崖絶壁に圧倒された。目測では比較対照がなく、 とてもじゃないがその高さは計りしることができない。 おそらく数百メートルはあるだろう。晴れ渡った青々とした 夏空を、360度取り囲んだ絶壁が迫り出し、覆い尽くすように 青空のキャンバスに自然の芸術を描き醸し出している。

 

ここはタロコ渓谷でも有名なポイントで、数百メートル もあるかと思われる断崖絶壁が周囲を取り囲んでいるため 空が一部しか見えていないのである。傍でお土産を販売していた 老成円熟とも見えるタロコの達人が教えてくれた。

 

空を見上げてごらん。空の形が何かの形に似てないかい? 私たちはおもむろに空を見上げる。すると友人がしばらく 経ってから、「台北の形に見える」と叫んだ。
台北の地形と言えば、米粒を大きくしたような形であるが、 取り囲み迫り出した断崖の頂の稜線が、見事に澄み切った 青空に台北の地形を描いているのである。

 

私たちはとても嬉しかった。おそらく今日一日の中で、 最も印象的なシーンと出会えたからだ。生涯忘れえぬ であろう場面に遭遇して、ほんとにタロコに来て 良かったと心から思った。

太魯閣渓谷(タロコ渓谷) 太魯閣渓谷(タロコ渓谷)
そこから暫く、絶景に包まれなが歩いて散策する。 眼下には遠く下方に、白く澄み切った清流が巨大な 自然岩石の縫い目を瀝瀝と音を立てながら流れる。 いつまでも見とれていたくなるような光景と、 思わず吸い込まれそうになる空恐ろしい 感情が交互するようだ。しばらく物思いにふけながら その場を後にした。

 

轟音とともに流れ行く所だけではないようで、 帰りの車窓から大きく湾曲した部分に河原を発見 した。是非あの清流に触れて見たい。そんな思いに 駆られた私は車を止めてもらい、皆を引き連れて 河原へと続く細い路を降りていった。

 

太魯閣渓谷(タロコ渓谷) 太魯閣渓谷(タロコ渓谷)
しばらく路沿いに歩いて降りて行くと、目の前に 自然の産物とも思えぬ光景が広がった。 純白な玉石が辺り一面を覆いつくし、中にはコバルト ブルーやグリーンを含んだ玉石もある。花蓮はもともと大理石の 産地なので、もしや?と思いしばらく玉石探しに没頭した。

 

後に、それが本当に大理石だったかどうだかは別にして、今でも 私のデスクではペーパーウェイトとして活躍しているのである。

 

色とりどりの玉石を従いゆったりと川の水面が流れていく。 素足になりズボンをひざの上まで捲くり上げて、ゆっくりと 清流の中へと足を浸す。それは、燦燦と照りつける太陽とは まったくの無縁で、とても冷たくひんやりとした。

 

透度も素晴らしく、日本では見たこともないくらいの絶美な 水郷を、ちゃぷちゃぷと徒渉する。玉石が素足を心地よく 刺激し、疲れた足と心を癒していく。身も心も洗われる 場面であった。

 

特別に観光客が立ち寄る場所でもないのだが、 タロコ渓谷を訪れた際には是非立ち寄って 欲しい場所である。
(こういった場所は数箇所あるので機会があれば お奨めです。)

 

ポケットの中に沢山の大理石(普通の石)と生涯忘れ得ない 思い出を詰め込み、私たちはタロコ渓谷を後にした。

 

追記。
ちなみに、後日調べたところ、風水的に言えば、河川の内側の玉石には 花(金運)が開く力を秘めるといわれているようです。
また、河川の外側は、その反対を意味しています。くれぐれもご留意 ください。